「光り輝く島」スリランカ。南アジアのインド洋に浮かぶこの島国には、我々の知らない魅力がたくさんあります。シーギリヤロックを代表とした数々の世界遺産。スリランカの文化や歴史を後世に伝える伝統的なペラヘラ祭り。多種のスパイスを用いたスリランカカレーや上品な香りと味を楽しむことのできるセイロンティーなどの豊かな食文化。車を走らせれば象や孔雀などの野生動物と出会え、標高の高い地域を訪れれば年間を通して涼しい気候や雄大な自然を感じることができます。これほど素晴らしいスリランカの魅力を世界の人たちにもっと知って欲しい。初めてスリランカを訪れた際、このような思いが込み上げ、それは渡航を重ねるごとに次第に増していきました。 そんなスリランカを旅している際、とあるスリランカの方からこのような話を伺いました。「スリランカのシナモン産業の課題を解決してほしい。」気になって調べてみると、スリランカのセイロンシナモンは高級シナモン市場の70%を占めていること、肝臓に悪影響を及ぼすクマリンの含有量が他国のシナモンと比べて限りなく少ないこと、棘のないマイルドな風味を持ち家庭料理からお菓子まで様々な料理に利用されていることといったセイロンシナモンの魅力が次々と分かりました。それと同時にシナモンの加工過程における課題も見えてきました。この課題を解決することでスリランカのシナモン産業を発展させ、スリランカの魅力を世界にもっと伝えたい。このような思いのもと、スリランカシナモンプロジェクトは立ち上げられました。
高級シナモンとして知られるスリランカのシナモンは、シナモンの木の皮を加工して作られます。シナモンの木の皮は2層構造になっていて、それぞれOuter Bark、Inner Barkと呼ばれます。乾燥してシナモンスティックになったり粉砕してシナモンパウダーになったりして皆さんのお手元に届くのは、このInner Barkの部分です。従って、シナモン農家たちはまずOuter Barkをそぎ落とし、次にInner Barkをむき取ります。そして、現在ではこのようなシナモン加工は全て手作業で行われており、熟練した技術が必要とされています。
Outerbarkチームでは、誰でもシナモンの外皮を剥けるツール、を目標にツール開発をしています。 将来的には、時間的効率や人的効率も視野にいれています。 現在、多くの農家では、コケッタと呼ばれるナイフのような道具を用いて外皮を剥いでいます。 農家への負担が大きく、フェアトレードなどの面からも、この作業を効率化することは利点が大きいです。 我々のツール開発は以下の3つの段階で行われています。 ① アイデア出し:ここではブレインストーミングなどを用いてツールのアイデアを出します。生み出されたアイデアをグルーピングし、取り組むべきツールアイデアを決めていきます。 ② ツール作成:ここでは3DCADやモックなどを利用してアイデアを具体化します。具体化されたアイデアをもとにツールを作成します。 ③ 検証作業:ここでは作成したツールを検証し、問題点や改善点を洗い出します。ここで見つかった課題を元にアイデア出しの段階に戻ります。 この3段階を様々なアイデアに対して幾度も行うことで、渡航時に試せるようなツールの開発を行っています。2021年度は主に3アイデアに対して取り組みました。加えて、ツールに使う刃に関して考察を行い、実験を元にシナモンの外皮を剥くのに適した刃の種類を検討しました。 2022年度では、実際に現地のシナモンを剥くことのできるツールの作成、スリランカの大学との交流、そして実際にツールを現地に送って検証することを目標としています。これらの目標を達成するため、機械製作の知識及び技術の習得や英語力の向上を行いつつ、日々機械製作に取り組んでいます。
Inner Barkチームでは、シナモン加工のプロセスのうち、Inner Barkをむき取る作業を効率化するための道具づくりを行っています。 Inner Barkをむく作業は製品の価値に直結する重要な工程で、今は特別なトレーニングを受けた人にしかできません。 また、今のシナモン加工の中で最も長い時間が費やされている工程でもあります。 従って、誰でも簡単にInner Barkがむけるような皮むき器ができれば、シナモンの生産量を飛躍的にアップさせることができるのです。 2020年度及び2021年度は感染症の影響で対面での作業はできませんでしたが、オンラインミーティングで相談しながら道具を設計し、自宅でできる作業を中心にものづくりを行いました。 道具の設計には3D-CADを用い、ものづくりには大学の部室から持ち帰った工具を用いてホームセンターで買った材料を加工しました。 また、3D-CADの使い方、ものつくりの流れや工業デザインについて学ぶための勉強会も行いました。 いくつかの試作品が完成したので、2022年度はこれらの改良を行っていきます。 まずは身近な材料でテストし、現地のシナモンがむけるように性能を上げていきます。 また、このような流れの中で全く新しいアイデアが生まれることも期待しています。 加えて、3D-CADの使い方に関する勉強会やスリランカのシナモン加工に関する説明会なども継続的に行う予定です。
IDAのビジネスチームの最終目標はinnerbarkチームとouterbarkチームが作り上げた製品を現地の方に売ることです。 その為にビジネスプランを作成し基金を獲得するのが目標です。 このビジネスチームは発足から日が浅くメンバーたちもビジネスに精通しているわけではないのですが、 大学生の参加できるビジネスコンテストに参加し、その反省をふまえた勉強会を定期的に開き、 経験を積みながら勉強することで、各々のレベルアップを行います。 このチームの特徴は下級生から上級生まで遠慮せず議論ができる環境が整っています。 1年生から主体的な役割を担うこともできチームの方向性まで決定できます。興味ある方はぜひお越しください。
New cinnamonチームです。 上記の3チームの活動に加え、New cinnamonチームでは、シナモンを用いた新たな製品の開発に取り組んでいます。その一つとして、伝統的なシナモンスティックの作り方とは異なる方法で作るシナモンスティック、シン・シナモンです。その加工方法は以下の通りです。 ① シナモンの枝を切る ② Outer barkをむく ③ Inner barkを雑にむく ④ 粉末状にし、乾燥させる ⑤ 棒状に固める 伝統的な作り方の中でもInner barkを剥く過程が最も難しく繊細さを必要とするためこれを簡略化することで効率を大きく向上できます。 現在は、麺類や錠剤の製法を模倣してパウダーを固める方法を探しています。 2022年度は新入生を加え、新入生を中心に新たな製品の開発や、現在開発中のシン・シナモンの改良に取り組んでいきます。